アスベストのマスク選びはココを見れば分かる!安全なマスクの選び方

アスベストは非常に危険な物質です。

適切な品質のマスクを付けない作業は、肺がんや中皮腫などの重大な疾患の原因になりかねません。

今回の記事では、マスクを選ぶ基準にはどのような物があるのか、またそれはどの作業までなら行えるのかについて見ていきたいと思います。

目次

アスベストの危険性

アスベストは、かつて建築材料や工業製品に広く使用されていた天然の繊維状鉱物です。

しかし、その微細な繊維が肺に入ると、深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになりました。

アスベストを吸引すると、肺がんや中皮腫、石綿肺などの重篤な疾患を発症するリスクが高まります。

発症までに20~50年と長い潜伏期間があるため、過去の曝露が原因で今なお多くの方が苦しんでいるのです。

アスベストは、建物の解体や改修工事、メンテナンス作業など、様々な場面で飛散する可能性があります。

一度吸い込んでしまうと体内から排出されにくく、健康被害につながる恐れがあるため、アスベストを扱う作業では適切な防護措置が不可欠です。

中でもマスクは、アスベスト吸引を防ぐ上で極めて重要なアイテムと言えるでしょう。

アスベスト作業時のマスクはどんな種類がある?

使い捨て式防じんマスク

引用:3M 使い捨て式防じんマスク 8812J DS1 排気弁付き (10枚入)|現場市場

使い捨て式防じんマスクは、不織布などでできた比較的安価なマスクです。

国家検定に合格した型式のものは、DS1、DS2、DS3の3区分に分けられます。

Dは使い捨て式防じんマスク、数字は粒子捕集効率を表します。

粒子捕集効率はDS1が80%以上、DS2が95%以上、DS3が99.9%以上となっています。

取替え式防じんマスク

引用:3M 取替式防じんマスク(RL3国家検定合格品) 6000/2091-RL3 Mサイズ 6000/2091-RL3M|現場市場

取替え式防じんマスクは、フィルターを交換できるタイプのマスクです。使い捨て式に比べて高性能で、RS1、RS2、RS3の3区分があります。

Rは取替え式防じんマスク、数字は粒子捕集効率を表します。

フィルター捕集効率は、RS1が80%以上、RS2が95%以上、RS3が99.9%以上です。

電動ファン付き呼吸用保護具

引用:興研 電動ファン付呼吸用保護具 サカヰ式 BL-321H 電池・充電器付 388998|現場市場

電動ファン付き呼吸用保護具は、電動ファンによって空気をフィルターに通し、ろ過された空気をマスク内に供給する高性能なマスクです。

S級、A級、B級の3区分に分かれ、漏れ率がS級は0.1%、A級は1.0%、B級は5.0%となっています。

アスベスト作業に適したマスクの選び方

マスクは区分で分けられている

アスベスト作業で使用するマスクは、マスクの種類とは別に、その性能によっていくつかの区分に分けられています。

区分は、マスクのフィルター性能と漏れ率で決められており、作業の種類や環境に応じて適切なマスクを選ぶ必要があります。

区分呼吸用保護具の種類
区分①・面体形及びルーズフィット形(フードをもつもの)の電動ファン付き呼吸用保護具(粒子捕集効率 99.97%以上(PL3又はPS3)、漏れ率0.1%以下(S級)、大風量形)
・複合式エアラインマスク(プレッシャデマンド形)
・送気マスク(プレッシャデマンド形エアラインマスク、一定流量形エアラインマスク、電動送風機形ホースマスク)
・自給式呼吸器(空気呼吸器、圧縮酸素形循環式呼吸器)
区分②・全面形面体を有する取替え式防じんマスク(粒子捕集効率99.9%以上、 RS3又はRL3)
区分③・半面形面体を有する取替え式防じんマスク(粒子捕集効率99.9%以上、 RS3又はRL3)
区分④・取替え式防じんマスク(粒子捕集効率95.0%以上、 RS2又はRL2)
マスクの区分について

区分①が最も防じん性が高く、区分④が低い、という分類になっています。

区分②と区分③はできる作業に違いはありません。

作業の種類に合わせたマスク選択が重要

アスベスト作業では、作業の内容や環境に応じて適切なマスクを選ぶ必要があります。

レベル1~3のそれぞれの作業によって、必要とされるマスクの性能が異なるためです。

低濃度のアスベストが予想される作業では区分④の防じんマスクでも十分ですが、高濃度の環境下では区分①の防じんマスクの使用が不可欠となります。

顔にフィットするサイズ・形状のマスクを選ぶ

マスクは顔にぴったりとフィットしていないと、アスベストが隙間から侵入してしまいます。自分の顔の大きさや形状に合ったマスクを選ぶことが大切です。

隙間ができないよう注意深く着用し、マスクと顔の密着性を確認しましょう。ひげを生やしている方は、ひげとマスクの間に隙間ができやすいので、特に注意が必要です。

正しい装着方法を守る

高性能なマスクを使用していても、正しく装着していなければ意味がありません。

マスクの着用方法を誤ると、アスベストが吸入される危険性が高まります。鼻の部分をしっかりと押さえて顔にフィットさせ、隙間が無いことを確認しましょう。

また、使用後のマスクはアスベストで汚染されているため、マスクを外す際は顔面を避けるようにして慎重に取り外します。

アスベスト作業別に推奨されるマスクの区分

アスベスト対策において、区分ごとに行うことができる作業は決まっています。

区分は最も性能の高い区分①から区分④まで存在しており、区分④で行うことができる作業は、区分①②③のマスクでも行うことができます。

区分②、③の作業についても同様に、区分①のマスクで行うことができます。

アスベストの防じんマスク区分④でできる作業

区分④のマスクでできる作業は、以下のとおりです。

作業レベル除去対象製品工法
レベル2対価被覆材囲い込み(破砕・切断・穿孔・研磨を伴わないもの)
レベル2断熱材囲い込み(破砕・切断・穿孔・研磨を伴わないもの)
レベル3成形板原型のままの取り外し
その他隔離空間外側での作業
アスベストの防じんマスク区分④でできる作業

区分④のマスクは、アスベスト除去作業用としては最も簡易的なものであるため、粉じんが舞う可能性がある作業は行うことができません。

アスベストの防じんマスク区分②③でできる作業

区分②③のマスクで行うことができる作業は、同じ内容になっています。

ただし、区分③のマスクはシールドがないので、別途顔の上部を守る装備が必要になります。

区分②③のマスクでできる作業は、以下のとおりです。

作業レベル除去対象製品工法
レベル1吹付け材・グローブバッグ
・囲い込み(破砕・切断・穿孔・研磨を伴わないもの)
レベル2耐火被覆材・グローブバッグ
レベル2保温材・グローブバッグ
・原型のままの取り外し(切断等の作業を伴わない場合)
・非アスベスト部での切断
レベル3成形板・切断、穿孔、研磨等を伴う除去作業
アスベストの防じんマスク区分②③でできる作業

アスベストの防じんマスク区分①でできる作業

区分①のマスクは、アスベスト作業において最も性能の高いマスクと言えます。

区分①のマスクでしかできない作業は以下のようになっています。

作業レベル除去対象製品工法
レベル1吹付け材・掻き落とし、破砕
・切断、穿孔、研磨
・封じ込め
・囲い込み(破砕・切断・穿孔・研磨を伴うもの)
レベル2耐火被覆材・切断、穿孔、研磨等を伴う除去作業
・封じ込め
・囲い込み(破砕・切断・穿孔・研磨を伴うもの)
レベル2断熱材・切断、穿孔、研磨等を伴う除去作業
・封じ込め
・囲い込み(破砕・切断・穿孔・研磨を伴うもの)
レベル2保温材・切断、穿孔、研磨等の作業を行う場合
その他・隔離空間の構築・解体及び内部での作業
アスベストの防じんマスク区分①でできる作業

これらの作業は区分①のマスクでしか行えない作業になります。

半円形のマスクの場合、別途顔の上部を守る装備が必要となります。

マスクの管理と交換時期

一度使用したフィルターは繰り返し使用しない

マスクに使用するフィルターは、一度使用したら繰り返し使用せず、必ず廃棄しましょう。

廃棄については、フィルターに有害物質が付着していることになるので、特別産業廃棄物としての処理が必要となります。

マスクの保管方法にも注意する

マスクを清潔に保つことも重要なポイントです。

使用後のマスクは、埃やアスベストで汚染されています。専用の保管袋に入れて密閉し、他の器具と分けて保管しましょう。

アスベストの危険性を理解し適切なマスク選びを

作業レベルに合ったマスクの選択が肝心

アスベストの脅威から身を守るには、作業レベルに見合ったマスクの選択が何より大切です。

アスベスト濃度が高い現場では、より高性能なマスクが必要不可欠。

フィルター捕集効率や漏れ率など、マスクの性能表示をしっかりチェックして、要求される区分以上のものを使用するようにしましょう。

正しい装着と管理でアスベストから身を守る

マスクを正しく装着し、こまめに交換することも肝心です。顔との隙間を作らないよう注意深く着用し、使い捨てマスクの再利用は絶対にNGです。

フィルター交換も定期的に行い、清潔な保管を心がけましょう。

アスベストは目に見えない脅威ですが、適切なマスクの使用と管理を徹底することで、その危険性からしっかりと身を守ることができるのです。

まとめ

アスベストは、肺がんや中皮腫など深刻な健康被害を引き起こす危険な物質です。アスベストを扱う作業では、マスクの適切な選択と使用が極めて重要となります。

作業現場のアスベスト濃度に合わせて、要求される区分以上のマスクを選択しましょう。また、顔にフィットするサイズを選び、隙間を作らないよう正しく装着することも大切です。

使い捨てマスクの再利用は避け、取替え式や電動ファン付きではフィルター交換を定期的に行いましょう。アスベストの脅威から身を守るため、マスクの適切な選択と管理を心がけてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事の執筆者

アスベストナビ編集部のアバター
アスベストナビ編集部

アスベストナビ代表。アスベストについての総合情報をまとめたポータルサイト「アスベストナビ」を運営している。アスベストの健康被害から法制度の改正まで、幅広い知見を提供する。

目次