【レベル3】ケイカル板の見分け方と安全なアスベスト除去方法とは?

けい酸カルシウム板(通称・ケイカル板)には人体に有害なアスベストが含まれている可能性があると言われています。

しかしケイカル板にアスベストが含まれているかどうかは、見た目だけでは100%判別することは不可能です。ネット上に出回っている見分け方も、ほとんどがあまり役にたたない、もしくはかえってアスベストの飛散リスクを高めてしまうものが多いように見受けられます。

この記事では、実際に石綿含有ケイカル板はどのように見分けるのかベストなのか、そして万一見つけてしまった場合どのように対処すべきかを詳しく解説します。

目次

ケイカル板とは?

ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)は、主に建築材料として使用されてきた軽量で耐火性、耐湿性に優れた板材です。主原料が「ケイ酸質原料」や「消石灰」「パルプ」などの補強繊維で構成されているため、ただのセメント材に比べて割れにくく耐久力があるのが特徴です。

2種類のケイカル板とアスベスト含有の危険性

一般的にケイカル板は大きく2種類あります。

主な成分は同じですが、厚みによって第1種と第2種に分けられます。

  • 石綿含有ケイ酸カルシウム板第1種:比較的薄くて重く(厚4mm~10mm)、内装ボードや天井材などに使用されている。
  • 石綿含有ケイ酸カルシウム板第2種:主に分厚くて軽く(厚12mm~70mm)、鉄骨の耐火被覆材などに使用される。

また、ケイカル板には補強繊維として様々な原料が合成されていますが、その一つとしてアスベストを含有するものも存在します。人体に悪影響を与える可能性があることから、石綿含有ケイカル板ついては2004年に製造が禁止され、現在は厚生労働省によって厳しく使用・管理が規制されています。

石綿含有ケイカル板は第1種と第2種で処理の方法が異なります。

比較的高比重である石綿含有ケイカル板第1種はレベル3、低比重である石綿含有ケイカル板第2種はレベル2に分類され、それぞれ適切な処理が異なることに注意が必要となります。

ケイカル板がよく使用されている場所

ケイカル板は、その軽量性と耐火性そして耐湿性から、主に建築物の内外壁材、天井材、対価被膜や断熱材などに広く使用されてきました。特に、耐火性だけでなく耐湿性にも優れているという特質は、石膏ボードが使用できないようなキッチン、洗面所の壁、浴室の天井など、多湿で濡れやすい場所での使用に重宝されました。

ケイカル板の見分け方

実際、石綿含有ケイカル板をどのように見分けるか?

ネット上では、様々な方法でケイカル板にアスベストが含まれているかを見分ける方法が紹介されていることがよくあります。

例えば、以下のような方法です。

  • 建材の製造年代を確認する
  • 厚さが5mm〜8mmの建材を確認する
  • 手のひらにのせてこすったときに繊維状物質が残るかどうか確かめる

しかし、これらの方法は100%確実にアスベスト含有を見分けられる保証はなく、むしろアスベストばく露の危険性を高める非常に危険な行為であるため、絶対に実践してはいけません。

石綿含有のケイカル板を見分ける方法は、築年数や過去の建築計画などの客観的かつ間接的なファクトを収集することにとどめ、そこから先は専門の調査・分析機関に依頼をして、詳細な検査を行うことを強く推奨します。

築何年の建物にケイカル板は多い?

ケイカル板、特にアスベスト含有のものが使用されている可能性が高いのは、主に昭和50年代(1975年〜1985年)から平成初期(1989年〜1990年代初頭)にかけて建設された建物です。

この時期は、アスベストの健康へのリスクが広く認識される前であり、その耐火性や経済性から広く用いられていました。

したがって、この時期の建物を対象に石綿含有ケイカル板の調査を行うことが一つの目安となります。

スレートや石膏ボードとの違いは?

ケイカル板、スレート、石膏ボードは不燃建築材料として使用される主な板状材料で、見た目が非常に似ていますが、それぞれ以下のような特徴や違いがあります。

【ケイカル板】

  • 主成分が軽量気泡コンクリート
  • 軽量で断熱性に優れる
  • 防火性能が高い
  • 耐湿性に優れるため、水回りにも使用される
  • 比較的割れが少なく施工性が良い

【スレート】

  • 主成分が圧延した雲母質の石
  • 高密度で重量がある
  • 耐久性と防火性能に優れる
  • 高価で加工が難しい

【石膏(せっこう)ボード】

  • 主成分が石膏
  • 軽量で施工性が良い
  • 断熱性は低いが防火性能がある
  • 水濡れには弱いため、水回りには使用できない
  • ボード材の中で最も安価

スレートは屋根材に用いられることが多く、ケイカル板よりもはるかに重く、硬質であることが特徴です。

ケイカル板は軽量で加工がし易い分、スレートに比べると衝撃には弱いという特徴があります。

石膏ボードは、内壁や天井に使用されることが多い材料で、軽量でカットしやすい特性を持っています。ケイカル板との大きな違いは、水に濡れた際の反応です。

石膏ボードは水に弱く、濡れると簡単に損傷しますが、ケイカル板は耐水性があり、湿った環境でも比較的形状を保つことができます。さらに、ケイカル板は石膏ボードよりも硬く、打ち付けた際の音が異なるといわれています。

アスベスト含有が疑われるケイカル板の見分けには専門知識が必要なため、素人判断は避けるべきです。築年数や建材の特性に加え、専門家による詳細な調査が推奨されます。

石綿含有ケイカル板が見つかったときの対処法

まずは専門的な調査依頼から

ケイカル板は前述の通り、アスベストを含むもの含まないものなど様々です。そのため、見た目からそれを判別することは不可能と言っても過言ではありません。

万一ケイカル板やその他アスベスト含有疑いのある建材を発見した場合、最初に行うべきは専門的な機関に適切な調査を依頼することです。

細かい粒子が飛散し、人体に多大なる影響を与えるアスベストを安全に取り扱うためには、専門的な知識と技術が不可欠であり、誤った対応が二次被害を引き起こす可能性があります。

専門の調査業者は、サンプリングや顕微鏡による科学的な分析を通じて、建材中のアスベストの有無およびその種類と含有量を正確に特定できます。この結果に基づいて、適切な除去または対処方法が決定されます。

石綿含有ケイカル板の除去方法

専門機関による調査で石綿含有ケイカル板の使用が確認されたら、速やかに除去を行わなければいけません。

一般的なアスベストの除去作業では、アスベストが含有されている資材・建材を全て除去したあと、アスベストを含まない資材・建材に入れ替えるリムーバル工法がとられることが多いです。

石綿含有ケイカル板の除去作業も同様にリムーバル工法が取られることもありますが、他の工法で除去するケースもあります。注意しなければいけないのは、石綿含有ケイカル板の除去作業はその種類によっても対応が異なるため、適切な工法を選ぶ必要があります。

低比重である石綿含有ケイカル板第2種はアスベストレベル2に分類され、以下のような除去工法を取るケースがあります。

囲い込み工法

石綿含有ケイカル板の周りにビニールシートなどの密閉された仮設テントを設置し、内部で除去作業を行います。負圧は常時監視され、粉じんの外部拡散を防ぎます。

手工具ケレン工法

湿潤化剤で石綿含有ケイカル板を十分に湿らせ粉塵飛散を抑え、機械やワイヤーブラシで丁寧に剥がし取り除去する工法です。

グローブバッグ工法

配管エルボなどに使用されている石綿保温材を除去する際、対象箇所周辺を部分的にグローブバッグを使用し、密閉状態にして剥離作業を行う工法です。グローブバッグとは、腕をいれるグローブと一体となっている袋のことです。

いずれの除去作業も、アスベストの飛散防止に最新の注意を払い、全面マスク等の保護具の着用など徹底した安全管理のもの行う必要があり、資格をもった専門の業者が関連法令を厳格に遵守して遂行しなければいけません。

まとめ

アスベスト含有のケイカル板を正しく識別し、適切に対応することは、建物の安全性を確保し、居住者や周囲にいる人の健康を守る上で極めて重要です。もし身の回りにケイカル板が使用されている可能性が少しでもある場合は以下のポイントをしっかりと理解し適切な対処をしましょう。

  1. 決して自分だけの判断をせず、専門の調査会社に依頼をしてアスベストのリスクを正確に評価する。
  2. 調査結果に基づき、専門業者と協議して、除去方法や廃棄方法を決定する。

アスベスト調査・分析・除去はひとつの業者に任せるのがおすすめ

アスベスト調査、分析、除去プロセスは複雑で、各ステップで高い専門性が求められます。一連のプロセスを一つの信頼できる専門業者に任せることで、中間マージンがなくコストカットにつながったり、コミュニケーションの手間や時間が削減されたりなど様々なメリットがあります。特に近年はアスベスト関連法の改正が相次ぎ、それに対応できない業者も増えてきているため、調査や除去を依頼する際には実績がありと信頼のおける機関を選定しましょう。

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この記事の執筆者

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アスベストナビ編集部

アスベストナビ代表。アスベストについての総合情報をまとめたポータルサイト「アスベストナビ」を運営している。アスベストの健康被害から法制度の改正まで、幅広い知見を提供する。

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