【危険】アスベストが天井に!?見分け方と対処法について

アスベストが危険な物質であることが知れ渡った現在、古い建物を解体したり、リフォームしたりするときにアスベストが含まれている建材が使用されているかどうかは気になるポイントなのではないでしょうか。

現在は新しくアスベストが含有された建材を使用することは禁止されていますが、アスベストは安価で耐熱性や吸音性、耐火性などに優れている素材であるため、過去には一般的にアスベストを含む建材が使用されていた時代がありました。

とはいえ、アスベストには肺がん等の疾病を引き起こす可能性があるという報告があるため、知らないでは済まされない健康被害を受けてしまう可能性があります。

本記事では、天井に使用されることの多いアスベストの危険性やほかの素材との見分け方、対処法などについて詳しく解説します。

目次

天井に存在するアスベストの危険について

ここでは天井に使われたアスベストによる健康被害や全面禁止について解説します。

天井に使われたアスベストによる健康被害

WHO(世界保健機関)によると、アスベスト「肺線維症(じん肺)」や「悪性中皮腫」の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが報告されています。 アスベストが原因となってさまざまな病気を引き起こすことについては相関関係が認められているものの、アスベストを吸い込んだ時間や接触した濃度などによっては現在においても不明確な部分も多くあることが現状です。 たとえば、アスベストを短期間かつ低濃度のアスベストばく露の場合における発言性の危険性については不明確な部分が多いとされており、どのくらいアスベストを吸うことで中皮腫が発症するかは明らかになっていません。

参照:厚生労働省「アスベスト(石綿)に関するQ&A」

とはいえ、アスベストが原因で健康被害を受けた事例は数多く存在し、厚生労働省が発表した「令和4年度石綿ばく露作業による労災認定等事業場」という調査では、アスベストが原因による健康被害にて労災認定を受けた事業者は1,133事業場 (うち新規公表860事業場)となっています。

参照:厚生労働省「「令和4年度石綿ばく露作業による労災認定等事業場」を公表します」

このように、アスベストが原因となる健康被害については明らかでない部分はあるものの、相関関係が認められており、アスベストに接触する機会の多い方を中心に被害に遭っていることが現状です。

アスベストは全面禁止されている

日本におけるアスベストの使用については「労働安全衛生法施行令」によって定められていますが、2006年9月1日に改正され、アスベストの使用は全面禁止されています。

参照:厚生労働省「アスベスト全面禁止」

全面禁止の具体的な内容は以下の通りです。

”石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されています。”

引用:厚生労働省「アスベスト全面禁止」

とはいえ、「労働安全衛生法施行令」ではアスベストの全面禁止が定められている一方で、現状使用されているアスベストについては全面的に排除することが定められていないため、2024年現在においてはアスベストが利用された建造物が残っている場合があります。

たとえば、1960年〜1980年代ごろに建てられた日本の建物のなかにはアスベストが含まれた「バーミキュライト」が使用されている可能性があり、この時期に建てられた団地やアパートでは使用されているケースがほかに比べてやや多い印象です。

天井にアスベストが使用されている場合、普段から触るケースはほとんどありませんが、天井の電気交換や掃除、子どもの好奇心などによって触ってしまうケースがあったり、地震や経年劣化などによってアスベストが飛び散ってしまう可能性もあるため、天井のアスベストについても無視できる問題ではありません。

アスベストと類似する建材について

ここではアスベストの特徴と、類似する建材について詳しく解説します。

アスベストについて

アスベストとは、カナダや南アフリカ、北海道、秩父などで産出される天然の繊維状けい酸塩鉱物です。

「労働安全衛生法施行令」が改正されるまではスレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されていました。

アスベストは直径0.02〜0.35マイクロメートルほどの非常に小さい繊維となっており、吸い込んだり飛び散ることでの健康被害が報告されています。

岩綿(ロックウール)について

ロックウールは、鉄を生産するときに発生する「高炉スラグ」や玄武岩などの天然岩石を高温で溶かして繊維状に加工して作られる人口鉱物繊維です。

ロックウールは遮音性や断熱性に優れていることから断熱材に使用されることが多いことや、アスベストと似ている構造をしているため混同されがちですが、ロックウールは人体に影響のない物質として知られています。

ただし、ロックウールの中にはアスベストが含まれている場合があるため、ロックウール製品だからといって安心できないケースもあることを覚えておきましょう。

グラスウールについて

グラスウールは、ガラスを高温で溶かして細かい繊維状にしてから綿状に加工したガラス繊維です。

主な成分はリサイクルガラスとなっているため人体に悪影響はまったくなく、断熱性や吸音性、防振性にも優れているため、住宅用断熱材などでも使用されることもあります。

【図解】アスベストの判別方法とよく間違える建材のまとめ

アスベストの目視による判別は難しい

2024年現在、アスベストは人体への悪影響から使用が全面的に禁止されていますが、禁止される前に建てられた団地やアパートなどではアスベストが使用されている建材が残っている可能性もあります。

そこでアスベストが使用されているかどうかを調査する必要がありますが、アスベストによく似た見た目をしている「岩綿(ロックウール)」や「グラスウール」などの人体に無害な素材との判別がかなり難しいため、プロに判別の調査を依頼することが必要です。

天井にてよく使用されるアスベストやその特徴

天井にてよく使用されるアスベストは以下の通りです。

  • 吹付けアスベスト
  • 折板屋根のアスベスト含有断熱材
  • 吹付けひる石
  • 折板裏打ち石綿断熱材

それぞれのアスベストと特徴について、以下で詳しく解説します。

吹付けアスベスト

吹付けアスベストとは、アスベストとセメント系の結合材に水を加えて混合して施工されたアスベストを指します。

昭和30年から昭和50年まで耐火建築物や準耐火建築物で一般的に使用されており、アスベストに規制がかけられた昭和51年以降でもアスベスト含有量の低い吹付けアスベストが使用されていました。

アスベストの危険性を表す1から3までのレベル(レベル1がもっとも危険)のなかで、吹付けアスベストはもっとも危険だと言われるレベル1に分類されるため、天井裏をしっかりと見ることが大切です。

折板屋根のアスベスト含有断熱材

アスベストを含む断熱材には、屋根用折板裏断熱材と呼ばれるものがあります。

アスベストレベルは2となっているため、吹付けアスベストより危険性は低いと言われていますが、強い衝撃などが加わるとアスベストが飛散する可能性もあるため注意が必要です。

吹付けひる石

吹付けひる石は、ひる石(バーミキュライト)という天然鉱物から作られる素材のことを指し、ざらざらとした質感が特徴的です。

主成分となるバーミキュライトは1960年〜1980年ごろに製造され、アメリカのモンタナ州の鉱山から産出されましたが、アスベストを不純物として含んでいることが分かっています。

バーミキュライトには人体への悪影響はないため、アスベストが含まれていることが分かってからはアスベストを含んでいない南アフリカ産のバーミキュライトが使用されているため、現在作られているバーミキュライト製品にはまったく危険性はありません。

しかし、アメリカ産のバーミキュライトが使用されていた1960年〜1980年代に建築された建物ではアスベストが含まれている可能性もあります。

折板裏打ち石綿断熱材

折板裏打ち石綿断熱材とは、鋼板製屋根用折板の内側にアスベストのフェルト材を貼り付けたものです。現在は使用されていませんが、昭和58年頃まで使用されていた可能性があるとされています。

参照:岡山市「石綿(アスベスト)等使用実態調査及び時系列法規制の概要」

危険度の高い状態の劣化したアスベストを見分ける方法

危険度の高い状態の劣化したアスベストを見分ける方法は以下の通りです。

  • 表面が毛羽立ちしている場合繊維が崩れている場合
  • 綿が膨らんで垂れ下がっている場合
  • 層が浮き・はがれしている場合
  • 層の局部的損傷・欠損
  • 層の損傷・欠損

それぞれの方法について、以下で詳しく解説します。

表面が毛羽立ちしている場合

アスベストの表面が毛羽立ちしている場合、結合材などが劣化している可能性が高いです。

毛羽立ちは劣化が進んでいる状態ではなく、初期段階であることが多いです。

繊維が崩れている場合

アスベストの毛羽立ちからさらに劣化が進むと繊維が崩れてしまいます。

繊維が崩れてしまうとアスベストが少しの衝撃でも飛び散りやすくなるため危険です。

綿が膨らんで垂れ下がっている場合

アスベストの綿が膨らんで垂れ下がってしまうのは、吹付けアスベストが劣化したときに見られる症状です。

アスベストが劣化により脆くなった結果、重力などによって劣化したアスベストの綿が垂れ下がった状態になります。

この状態も飛散する可能性が高いため注意が必要です。

層が浮き・はがれしている場合

アスベストの劣化が進むと、アスベスト層が下地から浮いたり剥がれたりすることがあります。

アスベスト層と下地の間にスキマが空いてしまっている状態となるため、飛び散りやすくなります。

層の局部的損傷・欠損

アスベスト層の浮きやはがれの劣化が進行すると破損や欠損を起こし、局部的に剥がれ落ちやすくなります。

また、経年劣化だけでなく人為的な衝撃によってアスベスト層が傷ついて損傷・欠損を引き起こす可能性もあります。

この状態は非常に飛び散りやすくなるため注意が必要です。

層の損傷・欠損

アスベスト層の損傷・欠損が進行すると、局部的な劣化だったものが全体の損傷・破損になる可能性があります。

アスベスト全体が破損・欠損していると、飛散する可能性がかなり高く、すでに飛散している可能性が高いためとても危険な状況と言えます。

まとめ

本記事では、天井に使用されることの多いアスベストの危険性やほかの素材との見分け方、対処法などについて詳しく解説しました。

2024年現在、アスベストは全面的に使用が禁止されているため、2006年以降に建てられた建設物に関してはアスベストの心配をする必要はありませんが、2006年以前に建てられた建設物に関してはアスベストが使用されているかに注意する必要があります。

とはいえ、アスベストには岩綿(ロックウール)やグラスウールのように判別するのが非常に難しい似たような建材があるため、専門的な知識を持っていないと判別が難しいことがほとんどです。

そのため、アスベストの心配がある場合はプロに相談して調査してもらうようにすると良いでしょう。

ぜひ本記事を参考にして、天井に使用されているアスベストを正しく判断できるようにしてみてください。

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この記事の執筆者

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アスベストナビ編集部

アスベストナビ代表。アスベストについての総合情報をまとめたポータルサイト「アスベストナビ」を運営している。アスベストの健康被害から法制度の改正まで、幅広い知見を提供する。

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